クラリスの過去を知る者は少ないが、サバイバルのベテランであることはよく知られている。彼女はごく僅かな資源だけでも、極寒の雪の中を長く生き延びることができた。同時に狩猟の腕前も並外れていた。
たとえ吹雪の中でも、風の音の微妙な変化で獲物を探し出すことができた。彼女はこの能力を自慢することはなかったが、確実に他のハンターよりも多くの獲物を仕留めていた。さらに弓の腕前も驚異的で、瞬く間に矢をつがえて移動する獲物を容易く射抜いた。\n「いい射手が頼るのは目ではなく、直感とわずかな運だ」長い冬と共に過ごした日々で能力を身に着けた彼女は、そう語っていた
普段のクラリスは上品で人当たりがよく、周囲の人々を春風のように心温める存在だ。しかし、彼女のことを詮索するのはタブーだった。過去について尋ねられると、途端に不愉快な表情を浮かべて会話を打ち切った。なぜそこまで過去をひた隠しにするのだろうか?いつしか人々の間では予想合戦が始まっていた
その昔、街から街へと渡り歩いている医師がクラリスを治療しようとした。当時の彼女は狩猟中に怪我を負ったのだ。治療の中で、医師は彼女の右肩に深紅の太陽の印があることに気づいた。そしてそれが、ソラリス王朝の証であることを知っていた。これ以降、「クラリスは行方不明の王女だったのでは?」という噂があっという間に広がっていった
クラリスの過去の真実は、詐欺団で成長した孤児だった。養父は年頃の彼女を行方不明の王妃を偽らせ、太った中年の領主に嫁がせて金銭を騙し取ろうとした。猛吹雪が吹き荒れる新婚の夜、強い決意をもって彼女は逃げ出した。誰もがそのまま死んだものと思っていたが、奇跡的に生き延びることができた。この事実はごく僅かな人しか知らない。彼らはクラリスのため、秘密を守り続けることを誓っている